おばあが認めない得意料理、鶏のもも焼き(ゆでたまごデコレーション・スペシャルVer)


おばあが認めない得意料理、鶏のもも焼き(ゆでたまごデコレーション・スペシャルVer)

メニュー
・鶏のもも焼き
鶏もも肉、ゆでたまご
・茹でもやし
・いくらの醤油漬け
・マカロニサラダ(2日め)
マカロニ、ハム、きゅうり
・みそ汁(2日め)
豆腐、白菜、玉ねぎ、青ネギ
・サラダ
生:イチゴ、キャベツ 茹で:ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草
・ごはん

今晩のメインは鶏のもも焼きだ! 月に一度くらい出てくるこのシンプルで、おばあの長年の調理経験が活かされた料理を、僕は心待ちにしている。
ただ鶏肉を焼くだけなのに、自分で焼いても、よそで食べても、この味には勝てないと思う。

おばあは年季の入ったぶ厚いフライパンをじゅうぶんに熱し、骨付きの鶏もも肉の上からフタをして、時間をかけて蒸すように焼き上げる。厚みのある肉の中心や骨の周りまで絶妙な加減で火が通り、皮には焦げがなく、うすい焼き色が食欲をそそる。

鶏のもも焼きはおばあの得意料理。以前、僕は料理の味と腕前をたたえるつもりでおばあにそういったことがある。だけど、
「得意やということもないわ。買うてきたもんを、ただ料理してるだけや」
おばあは認めない。それが本心だったのか、おばあなりの謙遜だったのか聞き出せずにいた。

今日の鶏のもも焼きは、いつもより豪華だ。皿の空いているところに黄身の色が鮮やかなゆで卵がのっている。くし型切りなんて、りんごやメロン、スイカ以外ではじめて見た。こんなデコレーションをするということは、やはり鶏のもも焼きの味におばあは自信があって、得意料理だと自覚しているのではないか。

僕がゆで卵をひと切れ箸でつまむと、
「テレビで、ゆでたまごで飾り付けする料理をやっとったんや」
テーブルの向かいでおばあがいう。僕の目を見ず、何かを弁解しているみたいだ。テレビの料理番組でやっていたのをマネしただけで、鶏のもも焼きが得意料理というわけじゃない。おばあはそういいたいのだろう。
「そのテレビ番組でつくっていた料理というのは、鶏のもも焼きだったんか?」
「いいや……ちゃうけど、肉や! 肉やったわ!」
おばあはたった今、思い付いたようにいう。料理番組を見たというのも何だか怪しい。

好きな料理を前にして我慢ができないのでひとまず、僕はアルミホイルでくるまれた足先の部分をつかんで鶏肉にかぶりついた。皮は油で軽く揚げたようにぱりっとして香ばしく、やわらかな肉からはたっぷり含まれた肉汁が口いっぱいにあふれ出してくる。熱いけど少々のやけどには構わず、しっかり噛んで味わう。

隣の皿には茹でたもやしが盛られている。口に入れるとひんやりと冷たく、ポン酢の味がする。しゃきしゃきとした歯ごたえと一緒に味わっていると、やけどした口の中が冷やされ、残っていた鶏肉の脂っぽさがさっぱりと消えた。まさか……おばあはここまで計算して、ポン酢味の冷たい茹でもやしを、鶏のもも焼きと組み合わせたのか!

それに小皿にのったいくらの醤油漬けの赤色も、焼いた鶏肉の色を際立たせている。味も合っている。いくらを口に入れて鶏肉をかじると、強烈にごはんが欲しくなる。鶏肉、いくら、ごはん、そしてもやし。これは鶏のもも焼きを起点に考え抜かれた組み合わせだ。箸が止まらなくなる。

おばあはやっぱり、鶏のもも焼きが得意料理だとわかっている。そうでなければ、見た目も味も引き立てる名脇役ばかりがそろった献立を用意しなかっただろう。

それよりも気になることがある。おばあの席には、骨付きの鶏もも肉がないのだ。かわりにさっきから夢中で食べているのは、皿いっぱいに並んだ手羽元。両手で大事そうにひとつずつ左右からつまんで、骨のまわりの肉をかじり取っている。
「おばあ、鶏もも肉より手羽元が好きやったんか?」
僕は思わず聞いた。おばあは僕に目も向けず食べながら答える。
「好きということもないわ。ようけ買うてきたもんを焼いて、ただ食うてるだけや」
それが好きということやろ! と僕はいいたかったけど、聞いてなかったふりをして、また料理を食べはじめた。ひねくれ者のおばあと話をしても、本当のことはわからないし、思っていることも伝わらない。僕も「今日の料理はうまかった」とはいってやらない。夢中になって「ただ食う」だけだ。

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