ついにおばあの好物、春菊を投入!キムチ鍋(2日め)

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・キムチ鍋(2日め)
春菊、豚肉、白菜、豆腐、もやし、えのき、マロニー太麺タイプ、ミツカン「〆まで美味しいキムチ鍋つゆ ストレート」
・大根おろし
じゃこ、大根
・肉屋のコロッケ
・野菜
生:トマト、キャベツ 茹で:ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草
・ごはん

キムチ鍋は昨日、おばあと二人で食べ尽くしてしまった。シメの雑炊か麺類はさすがに食べられなかったから、今日もキムチ鍋が出てくるなら、残った汁にうどんでも入っているのかと思っていた。ところが2日めも、具材がたっぷり入っている。昨日のキムチ鍋がよっぽどおいしかったのだろう。

さらに鍋の中心には、キムチの唐辛子色を際立たせる緑の彩りが追加。おばあの好きな春菊だ。味の濃いものや甘いものを好む、小学生みたいな味覚のおばあでも、春菊の苦味だけは例外で、みそ汁に入っていることさえある。

そして僕にだけ、商店街の肉屋のコロッケと、大根おろしを用意してくれている。これはどちらも僕の好きなものだ。昨日のようにおかずはキムチ鍋だけでも十分なのに、どうして僕に気を遣うようなことをするのだろう。

キムチといえば白菜という先入観があるからか、おばあのつくるキムチ鍋には今まで、葉ものは白菜しか入っていなかった。昨日は汁が残ったので、2日めはちょっと冒険して好物の春菊を入れてみようと、たぶんおばあは思ったのだ。

春菊は苦味が強いし、キムチのイメージにも合わない。おばあの好きなキムチ鍋に、同じく好物の春菊を入れたとしても、辛さと苦味がケンカしてしまうかもしれない。鍋に春菊を入れると味が溶け出して、全体的にうっすらと苦くなる。それがキムチの味と合わなければ、春菊好きのおばあはまだいいとしても、僕にとっては悲惨なことになる。そうなっても肉屋のコロッケと大根おろしがあれば、おいしくごはんが食べられる。

恐る恐るキムチ鍋の春菊を口に入れる。苦味と辛味が……ぴったり合っている! おばあに目をやると、すでに取り皿を空にして2杯めに突入していた。春菊は山盛りで、他の具材は付け合せ程度に添えるだけだ。

「春菊うまいな。キムチ鍋に合ってよかったな」
僕は感想を伝える。するとおばあは、
「あたりまえや! 鍋には春菊が合うやろ! だって春菊やで」
とムキになる。

「でも失敗したときのために、コロッケと大根おろしを用意してたんやろ?」
「そりゃ……大根おろしは、鍋といっしょに食べたらうまいやろ」
たしかにそうだ。大根おろしを入れた「みぞれ鍋」というものがあるくらいだし、寄せ鍋のときもいっしょに食べるとうまい。

キムチ鍋の具材を、大根おろしの容器に取って食べてみた。これもいける。とくにマロニーがいい。やわらかい食感にじゃこがアクセントになり、甘めの大根がキムチのうま味と辛さを引き立てている。取り皿いっぱいによそって、つるつるとすする。

「大根おろしがキムチ鍋にも合うことはわかったけど、じゃあコロッケはなんであるんや?」
僕はマロニーを頬張りながら聞く。春菊がキムチ鍋にあわなかったときのためだと、僕はまだ疑っている。おばあは何食わぬ顔でいう。
「コロッケ好きやろ」

そう、僕はコロッケが好きだ。春菊も大根おろしもキムチ鍋に合う。それを腹いっぱい食べられること以上に僕は一体、何を求めているのだろう。おばあの一言で、この献立にした理由なんてどうでもよくなってきた。

「うん、好きや」
僕はいった。そしてコロッケをかじり、大根おろしに春菊をどっさりとのせた。