ダイエットに効果あり!? 旬の新鮮、茹でオクラ

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メニュー
・茹でオクラ
オクラ、かつお節
・煮物
手羽元、厚あげ、ごぼ天、たけのこ
・コロッケ(商店街の惣菜屋のもの)
・なます(2日め)
大根、にんじん、さば
・みそ汁
豆腐、わかめ
・サラダ
生:トマト、キャベツ 茹で:ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草
・ごはん(博多みやげの明太子のせ)

今晩の献立は品数が多い。煮物に揚げ物、酢の物もあって食べごたえがありそう。さらにごはんにのっているのは博多名物、明太子! ごはんとの相性は抜群で、これだけでお茶碗が空になることは必至。他のおかずをおいしくいただくためにも、おかわりはほぼ確定だ。

このごろ、おばあの料理を食べ過ぎて太ってきた。基礎代謝量を上げてダイエットするために、朝と夜にテレビを見ながらちょっとした筋トレをしている。だからお腹が減るし、なんとなく筋肉もついてきている気がするので、ごはんを二膳くらい平らげても差し引きゼロか、悪くてもほんのすこしのカロリーオーバーだろう。二杯めはふわっと軽めに盛ればいい。

食卓の向かいの席のおばあは、手づかみで手羽元にかぶりついている。今日は“おばあフィットネス”に行ったらしく、おばあも食欲は旺盛だ。ただしなぜか、おばあの前には茹でたオクラがない。

おばあは緑黄色野菜よりも肉や炭水化物を好む。サラダは医者のすすめで仕方なく食べている。でもオクラは、去年も春先からたまに食べていたし、嫌いじゃなかったはず。ただこれだけおかずがあれば、さすがのおばあでも食べきれないのだろう。オクラのほうがコロッケよりも好みの優先順位が低いのだ。

ではなぜ僕にだけオクラを出したのだろうか。しかも大きめの皿にどっさり。品数が少ない別の日に小皿に盛れば、僕とおばあ、二人ぶんのおかずになった。理由を聞いてみようと顔を上げると、鶏の骨をしゃぶっていたおばあが先に口を開いた。
「オクラは、好きなもんかけて食えや」

出鼻をくじかれ、質問する気がうせてしまった。おばあはいつも考えるよりも先に行動するので、どうせ聞いても「そんなんわからん」とか「知らん」といわれるだけだ。まとも答えはたまにしか返ってこない。僕は台所へ行き、冷蔵庫の扉の棚からポン酢のビンとマヨネーズのチューブをつかんでテーブルに戻った。

オクラの上からポン酢をかけ、皿の端にマヨネーズを盛った。するとおばあが
「オクラに、マヨネーズなんかつけて食うんか?!」
疑問というより、大声で叱りつけるようにいった。おばあがさっき「好きなもん」といった通り、僕は好きなマヨネーズをつけて食べるのだ。何が問題なのだろうか。オクラにポン酢とマヨネーズの組み合わせが変だというなら、おばあだって、今はノンオイルドレッシングだけど、以前はサラダにポン酢とマヨネーズをたっぷりかけていた。

これには僕も黙っていられない。
「マヨネーズの何があかんのや!」
と語気を強めていい返した。また血の気の多いおばあが怒鳴ってくるかと思ったけどコロッケを掴んでいた箸を置き、真剣な表情になった。
「お前、近ごろ太ってきてるやろ。マヨネーズはあかん。今に見てられんように、ぶくぶくになってまうで。ごはんも一膳にしときや」

おばあも僕の体型を気にしていたのか。だから僕に山盛りのオクラを食べさせ、加速する食欲が太りやすいごはんに向かうのを、抑えようとしてくれていたのだ。

だったらせめて、明太子は外してほしかった。煮物やコロッケ、みそ汁でじゅうぶんごはんがすすむ。僕は釈然としないまま、マヨネーズをつけずにオクラをひとつ口に運んだ。

4月になって出回りはじめたオクラは、新鮮なみずみずしさを感じさせる歯ごたえがあった。口の中で緑の皮がぱりぱりと割れて、白い種のひと粒ひと粒が弾ける。次々とオクラを口に入れ、何度も噛んでいると、これだけで空腹が満たされていくような気がした。ごはんはすこし残そう。そう決意して食べ進めていたのに、結局、きれいにぜんぶ平らげてしまった。やっぱりもう一杯食べられるな。と思い直しながら、お茶を飲んで一息つくと
「それよか食べたら、食べ過ぎやで!」
ふたたびおばあが機先を制した。